電話にまつわるトラブルと言えば、間違い電話やいたずら電話などがあるけど、私の体験した犯罪すれすれ、
あるいは犯罪そのもののとんでもない電話のかずかず。まあ、ちょっと聞いてください･･･
その１-「オレやオレや｣電話事件
その2-「おい、よく聞けよ」電話事件
その3-「アンケートお願いします｣電話事件
受話器を取った途端に、｢オレやオレや｣と男の声がした。
「だれや？」と思いながら、あまりに堂々とした「オレやオレや｣に私の頭の中はフル稼働。
私に電話でいきなり「オレや」という男でこの声は？･･･で、咄嗟に二人の友人を思いついた。
一人は十数年来の友人で、地方で陶芸家をやっているＡ氏。年に一度くらいひょっこり上京してきてはひょ
っこり電話をくれる、人生の兄貴的な存在の人。
もう一人は、当時、仕事で知り合って数回飲みにいったＢ君。5万円で知人に譲ってもらったというベンツに
乗っており、ちょっとユニークな青年だった。
｢オレやオレや｣の声の主は声の質からこの二人に絞られた。
さて、ではいったいどっちなのか？
｢オレやオレや｣は私がそんなことを考えている間に、勝手に喋り始めた。
「実は、昨日飲みに行った帰り、そこで知り合った女の子を部屋まで送っていった。そしたら、
彼氏って男が現れて揉めてしまったんだ｣
ちょっと待て！ 揉めたということは、もしかして、あんた送り狼に変身したところを彼氏に見つかったって
こと?!
「オレやオレや」は素直に「うん」と言った。
Ａ氏が送り狼に変身なんてことは99.9%ありえない。とすると「オレやオレや」はＢ君だ！
おおーーーっ、Ｂ君なら送り狼に変身は80%くらいの確率でありそうだ。
と私は勝手に確信してしまった。
B 「その彼氏と今から会って、話をつけるんや」
そりゃ、ご苦労さん。自業自得という言葉がピッタリの状況やね。若気の至りとはいえ、君も大人の男や。
きちんと自分のやったことには責任とるんやね。まあ、頑張りや。
Ｂ 「なんか要求されるかもしれん」
私 「なんかって？ まさかお金とか？」
Ｂ 「多分」
私 「それやったら、計画的な美人局（ツツモタセ）じゃないの？ Ｂ君、はめられてしまったのかもね」
Ｂ 「かも･･･」
私 「まっ、あんたも悪いとこあったんだから、相手の人とよく話し合ってみれば。もし、それでも話がつか
なかったり、困ったことになったら、また電話ちょうだい」
私の立場ではそうアドバイスするしかなく、一旦電話を切った。
同時に幾つかの疑問が浮上してきた。
疑問１･・それほど親しいわけではないＢ君がなんで私に電話してきたのか？
疑問２･・それほど親しいわけではないＢ君がなんで自分の恥を私に晒すのか？
年上の私を「頼りになる姐サン」と見込んで電話してきたんだろうか･･･
なんか変な感じが付きまとっていた。
そして1時間後、またもやＢ君から電話が入った。
Ｂ 「今、相手の男と話しているけど、なかなか話がまとまらないんだ」
私 「分かった。Ｂ君の言い分だけじゃ事情がハッキリしないんで、相手の人と代わってよ。相手の言い
分も聞いてみるから」
すると、数秒の後、相手の男･Ｃが電話口に出た。
Ｃ 「どうしてくれるんや」
私 「は？ どうしてといわれても･･･。あなたサマはどうしたいんですか？」
Ｃ 「俺の女がやられたんや。あんた、身代わりになれ」
私 「はぁぁぁぁぁぁ?!」
Ｃは訳のワカラン理屈を言い出して、要するにＢが自分の彼女に手を出したんで、代わりに私がＣと付き合
えと言い出した。
当然、ここにきて、私はついにぶち切れた。
私 「アンタ、大きな勘違いしてるんとちゃうの！ 私はＢの彼女でもなんでもない、
ただの友達や。何で私がそこまでせんとあかんねん！アホかっ！」
Ｃ 「（ちょっとビックリしたように）彼女と違うんか？」
私 「神かけて、彼女やない。ただの友達ぃ！」
電話はＢに代わった。
私 「今の男の人、とんでもないアホやね。彼女がやられたから、他の女でやり返すなんて、そんなバカ
バカしい単純思考の人間なんかもう相手にせんほうがいいよ。もし、これ以上困ったことになるんや
ったら、改めて電話してきてよ」
私はプンプンと電話を切った。
それから二時間たっても、三時間たっても電話はなかった。
ああは言ったものの、どうなったか結果がちょっとだけ気になり始めて･･･
心配しても仕方ないし、とりあえずこっちから電話して結果だけは聞いてみよう。
そう決心して、Ｂ君に電話を入れた。
私 「あれ、どうなった？」
Ｂ 「あれって？」
私 「今日電話をくれたでしょう？」
Ｂ 「いや、電話なんて、してないっす。ずっと仕事だったから」
私 「ウソッ?! じゃあ、あの電話は･･･？？？」
私は電話の内容をＢ君に伝えることはできなかった。
だって･･･送り狼、Ｂ君だったらやりそうなんで、てっきりＢ君かと思ったよ･･･なんて私の偏見と独断でＢ君
を傷つけるわけにはいかない。
すまん、Ｂ君。君ならやりそうだと勝手に思い込んで･･･と心の中で謝った（冷汗）
しかし、しかし、ではいったいあの電話は誰の仕業？？？
その答えは間もなく、新聞の記事が教えてくれた。
「オレやオレや強姦魔捕まる！」
記事によると･･･犯人は「オレやオレや」と適当に電話して、彼氏やボーイフレンドと勘違いした女性を呼び
出しては、ホテルに連れ込み乱暴していたという。
ご丁寧にも、渋谷のファッションホテルの前でまさに女性を連れ込もうとした男の写真がバッチリ写っていた
なんや、ただのもっさりしたオッサンやないの。
これですべて合点がいった。
ＢとＣは自作自演だったというわけだ。
この「オレやオレや」に引っかかって犠牲になった女性たちもかなりいたらしい。
私だって、いきなり「オレやオレや」と言われて、心の中で「だれや？」と思いながらも口に出して「誰？」っ
て言えなかったもんな。後で考えれば、そんな簡単なことなんで聞けなかったの･･･と思うけど、その時の電
話の雰囲気で「聞けない」雰囲気ってのがあったんだよね。
私の場合、当時付き合っていた人と全く違う声だったんで、咄嗟に友人から？ と思い込んだけど、もし、電
話の声が付き合っている人とそっくりの声だったら、心配して「会って事情をちゃんと聞こう」と飛んで行った
かもしれない。
危ない、危ない･･･
後日談
それから数ヶ月。仕事スペースが手狭になったために、同じ区内の歩いて15分くらいの場所に引っ越した。
そんなある日、また掛かってきましたよ。
「オレやオレや」が。
私の第一声。
「あれっ、もう刑務所でたん？」
これには相手のほうが絶句しました。
なので私はきちんと説明してあげました。
あなたが捕まるちょっと前、あなたは私に電話をして来たんだよ。今と全く同じ電話を。
犯人 「･････････････････・」
私のシナリオライター魂がうずいた。取材や取材や！
私 「お尋ねしますが、捕まってもなお再犯しようとするその心は？」
犯人「･･･わし、友達おらんのや。彼女もできん」
私 「だからって、あなたのやってることは犯罪でしょう。犯罪犯してまで女性と知り合いになるなんて虚
しくない？」
犯人「む、虚しい･･･」
私 「だしょう、だしょう、そやから･････」
犯人「そ、そやから･･･・あ、あんた、友達になってくれぇぇぇぇぇ。あんたのようになんでも話せ
る友達がいたら、こんなことせえへんかもしれん」
私 「そ、それは･･･・･できん！」
それだけはキッパリと断った。
私 「自分の力で彼女は見つけなさいよ。せっかくムショから出てきたんやから、もう虚しいことはせんと
きや」
電話を終えて、しばし私は迷った。
が、思い切って警察に電話を入れた。
「再犯の可能性あり」と。
彼女もなく、どんなに孤独だったとしても、他人を騙し、傷つけて満足するなんて、やはり人間とし
て最低の行為だよね。
以後、捕まったというニュースは聞いてないんで、まともに生きてるのかな。そう願いたいね。
ＴＯＰへ
この電話も、受話器を取るなり、「おい、よく聞けよ」で始まった。
男 「おい、よく聞けよ。あんたの写真を持っている」
私 「はぁ？ 写真って、なんのですか？」
男 「決まっとるやろうが。世間には見せられない写真だよ」
私 「そんな写真撮った覚えありませんけど」
男 「どこからでも撮れるんじゃい」
私 「つまり、盗撮したということですか？」
男 「まあ、そういうことだ」
私 「盗撮って、私の自宅をですか？」
男 「そうだ」
「オレやオレや」事件が記憶にまだ生々しい頃で、早速私のシナリオライター魂がうずいた。
取材や、取材や！
できるだけ話しをして、こんなことやる動機とか聞いてみよう！
私 「自宅を盗撮したと言いましたけど、いったいどの角度から撮ったんですかねぇ」
男 「どの角度でも撮れるんじゃい」
男の言葉が、真っ赤な嘘であるということはバレバレ。
当時私の住んでいたマンションは、隣の民家と隣接しており、外からはどの角度からでも盗撮なんてできるはずがな
い。
隣の民家の窓から撮る以外はね。
この隣の窓ってのが実は私にとってはちょっと悩みの種だったんだ。
ちょうど私の部屋に面したところに、隣家の二階の階段の窓があったのね。
二階はおじいさんの部屋らしくて、おじいさんが階段を上り下りする時に、その窓からおじいさんの顔が見えるの。
ハッと視線を感じて隣家の窓を見ると、「ちびまる子ちゃんのおじいさんの友蔵さん」みたいなおじいさんがこっちを見
ていて、バッチリ目が合ってしまう！
向こうだって、見るつもりで見てるんじゃないだろうから、いたずらに傷つけてはいけないと思い、パシッとカーテンを引
くんじゃなくて、さり気なくスーッとカーテンを引いて視界を遮るわけ。
そんな状況だったんで、昼間でもカーテンを引いていることが多かった。
なので、なおさらのこと盗撮なんてできるはずがない。
私はほとんど居直って、「どの角度の、どこら辺から撮ったの？」とか「もし本当に撮ったんなら、うちのマンションの住
所を言ってみて」とかジワジワと話を引き伸ばして、犯人から「何を聞き出してやろうか」なんてワクワクしていた。
すると犯人は「逆探知されてるかも？」との疑惑を持ったらしくて、「もういい」というなり電話
を切ってしまった。
「んもぅ、もっといろいろ聞きたかったのにィ！」
と私が残念がっのは言うまでもない。
ところがところが、30分後に私の思いが通じたのか、またまた掛かってきました。
男 「いいか、よく聞けよ。あんたの写真を持っている」
一字一句同じの、なんとワンパターンな出だし･･･私は思わず笑ってしまった。
私 「あのぉ、さっきもかかってきたんですけど」
今度はすかさず取材体制に入った。
私 「電話番号はどうして調べてるんですか」
男 「あ･････う･･･・適当に番号押して････」
私 「でも、同じところに二回も？」
男 「あ･････う･････」
ガチャン。切れてしまった･････
これって明らかに恐喝行為だよね。
こんな単純な犯罪に引っかかる人っているのかな？
ＴＯＰへ
閉じこもって仕事をしており、何日も誰にも会わずに、電話も掛かってこなかったある夜、その電話はかかっ
てきた。
男 「こちら『主○と生活社』ですが、離婚についてのアンケートをお願いしたいんで
すが」
なに、離婚！
当時、私はバツイチで二度目の結婚もシナリオライターデビューと同時に暗礁に乗り上げ始めて、夫とは別
居中の身だった。
よかよか、離婚のことなら何でも聞いてよ！
「離婚･再婚ならお任せ」を売りのシナリオライターになろうと、まさに居直り中だったからねぇ。
それに正直言うと、出版社の編集さんと知り合ういい機会だ、というヨコシマな野心もチラッと芽生えた。
それで延々と離婚について、自分のケースも交えて話しましたですよ。
男と女の結婚観･家庭観の違いとか･･･内容は本当に真面目なことばかりね。
さらに、相手の編集さんは、私がＳ区内に住んでいると知ると、自分もＳ区内で育ったんだと共通の話題が見
つかり、話はますます弾んだ。
気がついたら二時間は経過していた。
それで、最後のほうは、今度、スケジュールが合ったなら飲みながらでも話しましょうかということになり、相
手は自分の携帯の電話番号を教えてくれた。
久々の長電話で、それなりに充実感があった。
が、それから間もなく、友人の若い役者さんから電話があり、私はさっきの長電話の理由を話した。
すると彼は一言･･･
「なんか、おかしいですよ。その電話」
なにが、どこがおかしいちゅうねん･･･？
確かに、夜、アンケートの電話がかかるのは常識から言えばおかしいかもしれない。
しかし、私の知っている出版社の編集さんたちは時間関係無しに働いてるし、それで夜に仕事してるなんて
十分ありうると自分では納得していた。
別におかしくないよ･･･といいつつも、友人の役者の言葉が妙に気になりはじめ･･･
翌日、私は思い切って『主○と生活社』に電話を入れてみた。
夕べ、「アンケートの電話がかかってきた」ことについて、そういう電話アンケートを実際に行っているのかど
うか。
すると、電話に出た出版社の人は思いがけない言葉をおっしゃった。
「先日も栃木の人から、そういう問い合わせがありましたが、我が社は一切そのよう
なアンケートはやっておりません」
な、なぬっ･･･ンじゃ、昨日の電話はいったいなんだったの?!
答えは単純。
電話アンケートと称して、女性から赤裸々体験を聞きだして喜ぶ変態野郎！！！
つまり、私はまんまと引っかかってしまったわけだ。
ただし、私の場合、赤裸々体験はナシで、真面目な話ばかりだったけどね。
「我が社の名前を騙るというのは犯罪行為です。犯人の電話番号を教えてください」
と出版社の人から頼まれてしまった。
私は、ニュースソースが「私」と分からないように犯人にお灸をすえるのなら･･･という条件で、相手の携帯の
番号を教えた。
それから10日ほど経って、問題の犯人から電話がかかってきた。
開口一番
「ごめんなさい！ 申し訳ありませんでした！」
ちょっと待ってよ、ごめんなさいは分かったけど、あんたの話したことすべて嘘だったの？
Ｓ区で生まれ育った話というのも？
だけど犯人は、一切余計なことは言わず、ひたすら泣きそうな声で「ごめんなさい、ご
めんなさい」を繰り返して電話を切った。
今度だけはしみじみ思った。
別に私は「性善説」の人間じゃないけど、だけどあまりに簡単に人を信じすぎやしないか？
人を信じるって悪いことじゃないはずなんだけど･･･
しかし、今の世の中、犯罪も多様化してるし、「どこか不自然」と思ったら、少しは疑えよっ！
ってね。
自分の身は自分で守るしかないんだから。
以上、トホホな私のトホホな事件のかずかずでした。
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