病室の雨期に
霞のたちこめる

白い布性の断崖の果てに

すぼめられたこうもり傘一本  忘れられ

まどろみに浮かぶ孤島に  光はとぎれる

窓の外は雨期



音もなく  色もなく  

指から指へかけわたされた呪縛に

沈殿していく顔のないひととの交接

瞼のなかをあたたかいものが鼓動する



島がグラリと揺れる

窓が開かれる

密雷が近づく

窓にむかってこうもり傘が広げられる

迷いこんだ鳥はうずくまるわたしの

冒された胸をついばむ



病の淵で毛髪はのびつづけ

育たない生殖器へのいらだちが育つ

鉢植えの花の芽をつみとり

罪のない健全が居直る
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